ハックスレーの
ゴー宣いきもの図鑑⑩
「フグの常識を打ち破る種を紹介します」
ウチワフグTriodon macropterus。
フグ目ウチワフグ科ウチワフグ属。
※モノタイプな属です。
インド~西太平洋の水深100m以深に生息する深海性の「フグ」で稀種とされ、国内では琉球列島などに生息しています。
フグの仲間では風船のように腹を丸く膨らませる種類が一般的ですが、本種は風船状ではなく、喉骨を稼働させて「うちわ状」に眼状斑のある腹膜を広げます。
英名がThreetooth Puffer。
直訳すれば、「3本歯のフグ」の意味だそうで、言葉の通り、上あごに2本、下あごに1本の歯が生えています。
沖縄美ら海水族館では2016年にウチワフグの行動観察に成功しました。
ウチワフグは水槽内で他魚が接近すると、うちわ状に広がることが確認され、他の「フグ」が風船状に丸く膨らむときと同じように、外敵に対しての威嚇行為ではないかと考えられるようになりました。
眼状斑も眼球への攻撃をかわす適応かも知れません。
このような特徴を持つ「フグ」は本種のみ。
食用にもされ、無毒だそうです。
食べた人によれば、味は淡白みたいです。
ウチワフグは「フグ」、いわゆる真正フグではありません。
実は、フグ毒はテトロドトキシンと言われる物質によって引き起こされます(トキシンは毒素の意味で、ギリシャ語のトキシコンファルマコン、訳すと「一撃で敵を倒す毒矢」から来てます)。
このフグ毒を持つ魚類は、ツムギハゼという魚を除き、全てのマフグ科の魚に限られるからです。
近年行われたフグ目のミトコンドリアゲノムに基づく系統解析の結果によると、ウチワフグは、ベニカワムキ科とハコフグ科と非常に近縁だったそうで、マフグ科やカワハギ科とは比較的遠い関係にあると推測されました。
まだまだ詳しい生態が解明されていない魚ですので、これからの研究に期待しています。
用語解説
※モノタイプ⋯生物の分類で1属1種の意味