ハックスレーの
ゴー宣いきもの図鑑⑫
「アフリカの空の神兵」
ゴマバラワシ Polemaetus bellicosus。
タカ目タカ科ゴマバラワシ属。
今年の1月に南アフリカの剥製ショップ「Pan African Art Gallery 」から購入しました。
オーナーのModu氏のイチオシです。
Modu氏は本種にとても強い思い入れのある人物で、話によると私は日本人初のゴマバラワシの標本の購入者らしいです。
全長78〜96センチ。
体重雄2.2〜3.8キロ、雌4.45〜6.5キロ。
翼開長188〜260センチ。
サブサハラアフリカに分布。
北はソマリア、南は南アフリカの希望峰、西はセネガル、中でもアフリカ東部および南部に多く生息します。
開けた平地の中でも、特にサバンナに帯状に広がる森林地帯を好み、赤道付近の閉鎖林では見られないそうです。
英名はMartial Eagle、訳せば「好戦的な鷲」、学名のbellicosusは「軍事的な」というラテン語で、軍人のような雰囲気の本種にぴったりの名前で、ボサボサした冠羽と鋭い目線でサバンナを探索してます。
世界で5番目に重いワシで、翼開長も5番目に大きく、サブサハラアフリカでは捕食性の猛禽類の頂点に立つ種であり、大きさで張り合えるのはカンムリクマタカとコシジロイヌワシだけです。
繁殖期以外は多くの時間を上空のかなり高い場所で過ごし、その上空高くから6キロ先までの獲物にまで目をつけ、一気に急降下して捕獲します。
その力強さや獰猛さは猛禽類の中でもトップクラスで、脚は長く、指を開くと20センチを超え、5.2センチもある巨大な鉤爪で、ホロホロチョウ、ヒヒ、ライオンの仔、アンテロープ、イボイノシシ、ジャッカル、サーバル、カラカル、爬虫類等を仕留め、160種もの動物種が食物リストに入っています。
驚くべきものでは、37キロもあるダイカーの成獣で、これまでアフリカの猛禽類がものにした獲物の中で最大の記録です。
繁殖は単調な求愛のディスプレイから始まり、つがいは声を掛け合いながら上空へと舞い上がり、時折りスカイダンスし、互いの鉤爪を見せ合いますが、ダルマワシやカンムリクマタカみたいなアクロバティックな飛行をする事はないみたいです。
つがいは縄張りの中にある大木に巨大な巣を作り、毎年新しい材料である小枝を足すので、年々大きくなり、場合によっては幅と深さが2メートルを超えることがあります。
雌の産む卵の数は大抵一個、二年に一度だけで、45〜53日後に孵化を迎え、それから9週〜11週が過ぎると、自力で餌を食べられる様になります。
巣立ちには99日ほどかかり、巣立ち後も親鳥の元で長くて6ヶ月ほど過ごします。
この様な繁殖サイクルのため、猛禽類の中では最も繁殖力の弱い部類です。
寿命は長く、野生下では31.4年生きた記録がありますが、その長寿を全うするには幾多の困難があります。
現在、ゴマバラワシは急速に個体数を減らしています。
生息地の破壊や電線への衝突などの事故による死亡もありますが、最も危惧すべきは人間の「思い込み」で危害を加えられているからです。
中でも家畜を襲う証拠がないにも関わらず、農民によって銃殺され続けてます。
殺されてる個体の多くは若鳥だそうです。
保護活動家の人たちはゴマバラワシの個体数を回復させるため、保護区域に援助を行い、生息地の消失に歯止めをかけようと努力しており、その取り組みのみならず、現地の住民に本種への理解を促す啓蒙活動を行っています。
参考文献
※世界一美しい鷲の図鑑・株式会社エクスナレッジ
※動物たちの地球16・朝日出版社
※世界猛禽カタログ・どうぶつ出版
和ナビィ (木曜日, 04 6月 2020 21:25)
お答え下さりどうもありがとうございました。今まで知らなかったことばかり。足首まで羽毛がある(まるでズボンのよう。かっこいい!)理由も初めて知りました。
>タカとワシの区別、実は分類学的にはタカとワシも同じ「タカ目タカ科」のグループなんです。ただ便宜的にタカとワシを大きさで区別しているだけなんです。
鳥類の好きな孫がおり、よくいっしょに図鑑を見たり近くに飛来する鳥を見たりします。YouTubeでは姿や鳴き声も視聴でき興味深いです。
最も興味を示すのはやはり猛禽類☆です。鋭い目、鉤爪、嘴、大きく広げた羽、飛び方、そして獲物を発見し襲うスピード、獰猛さ、すべてに惹かれるようです。鳥の王者の風格があります。
ところで、小林先生はお若い頃からご自分のことを「わし」と仰います。私・僕・俺、などよりやはり「ワシ」という音はどっしりした響きです。使える人が限られる一人称ですね(^^);。
ハックスレー (木曜日, 04 6月 2020 19:47)
その「真正ワシ」も便宜的に使用されてる呼び名なので分類学的には何も変わらないです。
ちょっと混乱を招きそうなので加筆しておきますね。
ハックスレー (木曜日, 04 6月 2020 19:39)
和ナビィさん、ご感想ありがとうございます。
質問にお答え致します。
タカとワシの区別、実は分類学的にはタカとワシも同じ「タカ目タカ科」のグループなんです。
ただ便宜的にタカとワシを大きさで区別しているだけなんです。
全長が70センチ以下の種をタカ、全長が70センチ以上の種をワシと区別してます。
クジラとイルカ、サケとマスみたいなものです。
中には例外もあり、「タカ」と付けると響きが良くないので、あえて「ワシ」の呼び名を使用してる種があります。
過去に紹介したダルマワシが好例です。
なので「わしズム」「タカ狩り」もそう考えてれば良いと思います、笑。
さて、ワシの中には「真正ワシ」と呼ばれるグループがあります。
真正ワシとは「足首(人間で言えば手のひら)」まで羽毛がびっしり生えている種です。
ゴマバラワシ、カンムリクマタカ、イヌワシ‥‥などが代表的です。
何故、「足首」まで羽毛があるのか?と言うと、脚の保護のためです。
真正ワシは中型の哺乳類等を餌にしますから、もちろん襲われた獲物は反撃してきます。
その獲物に噛まれた際、ダメージを軽減する必要があるのです。
逆に魚を餌にするオオワシ、オジロワシ、ハクトウワシの「足首」には羽毛が生えていません。
これは魚を餌にするため、羽毛があると「足首」が常に濡れた状態になり、体温が低下するリスクが生じるためです。
乾きやすい様に適応しているわけですね。
和ナビィ (月曜日, 01 6月 2020 14:34)
迫力あるワシですね。ゴマをプチプチ撒いたような模様の胸だからこの和名が付いたのでしょうね。いかにも強そうなタカですね。
ハックスレーさんがここに紹介して下さると、YouTubeでその動画にもあたるのですが、その飛び方も堂々として風格があります。足首まで羽で覆われ、その鉤爪の鋭く大きなこと! これでガシッと掴まれてかなり重い動物も空に連れ去られるわけですね。
「脱正義論」はゴー宣にガシッと掴まれてその世界に入り込んだ(魅了され連れ去られた?;;)記念すべきご著書。この書を「影響を受けたご著書」の筆頭に挙げる方も多いと思います。
思えば当時【14章問題】(脱正義論でも大きく取り上げられたゴー宣の章をめぐる問題)について活発に議論されていたサイトがあり、それをどうしても読みたくてパソコンを手に入れインターネットを始めたのでした(^^)>。
ところで、ド素人の質問です;。タカとワシはどう区別されるのですか?。両方強そうだし似ています。「鷹狩」はあっても「ワシ狩り」って聞きません。 「たかズム」は無いけど「わしズム」はとても面白く一つの時代を成したと思います。