投稿者:グッビオのオオカミさん
【映画『怪物』 公式サイト】
https://gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
今日は是枝裕和監督の映画
「怪物」を観に行きました。
音楽は故・坂本龍一の遺作となるものを使っています。
【あらすじ】
『山や海に囲まれた、とある小さな町がありました。
ある日、風俗店などが入った雑居ビルが火事になります。
火事で目が醒めたのは麦野早織(安藤サクラ)と、11歳の息子の湊(黒川想矢)。
息子の湊は母早織に、ふと不思議な事を聞きます。
「豚の脳を移植した人間は、人間?豚?」
早織は夫を事故で亡くし、息子と二人で暮らしていました。
ある日、早織が帰りの遅い湊を捜していると
「怪物だーれだ?」
という湊の声を聞きます。
湊は誰かと待ち合わせをするかの様に、スマホのライトをかざしていました。
早織が湊を車に乗せ帰る途中に、走行中の車から湊は飛び出す。怪我は軽く、頭部のCT検査をしても問題は無かった。
湊は担任の保利先生(永山瑛太)から「湊の脳は豚の脳と入れ替えられた」と言われたと涙ぐむ。
数日、湊の様子を見、話を聞いた早織は、担任の保利先生から息子の湊がモラハラを受け、暴力を受けた事を校長の伏見(田中裕子)に訴える。
伏見校長も担任の保利、周囲の教職員もあからさまに嫌々に仕方無く対応する態度に激怒する早織。
ある日、担任の保利から
「息子さん、イジメやってますよ。家にカッターナイフとか凶器、ありません?」
と言われる、早織は帰宅し、湊が着火ライターを持っているのを見て、不安に駆られる。
湊がイジメているという、同級生の少年、星川依里(柊木陽太)を訪ねると、依里は早織を明るくもてなす。しかし、腕には火傷の跡があった。
数日後、担任の保利は保護者の前で暴力を認めて、謝罪し退職し、地元紙にも取り上げられる。
しかし、ある台風の日。湊と依里は姿を消す。
ならば、一連の事件の真実は…?』
『私の感想』
主人公は安藤サクラ演じる麦野早織ですが、永山瑛太演じる担任の教師、保利道敏も視点を替えたもう一人の主人公であり、11歳の少年麦野湊も主人公でした。
一つだけ軽いネタバレをしましょう。
湊にイジメられたとされた星川依里少年はなぜイジメられたのか?
この少年、星川依里の「心」は男では無かったのです。
その一つのささやかな秘密に端を発した、謎を巡って、全てが巻き込まれて行きます。
「怪物だーれだ?」
「怪物」は性的少数派である依里少年でしょうか?
それを認めない、他人でしょうか?
湊の母親早織と担任保利、この立場は何故食い違うのか?その食い違いに働いたものは何でしょうか?
それもまた一つの「怪物」かも知れません。
しかし、大人達の思いとはまた別に描かれる、恋とも愛とも定義出来ない、幼い少年たちの不思議な友情。
それは論理でも倫理でも道徳でもない、そして法や社会からも、あらゆる「〜べき論」から自由なものでした。
そこにあったものはとても未熟で、はかないが、ささやかな幸福感がある姿に、詩や歌の様な「美」の瞬間を見た様に思います。
参考までに関連記事を付けて置きます。
興味を持たれた方は映画館でご覧になって下さい。
とても、美しい映画でした。
【映画「怪物」観た後に"語り合いたくなる"その理由 エンタメ風でありながら社会派である作品の妙 | 映画・音楽 | 東洋経済オンライン】
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さとがえる (木曜日, 26 10月 2023 12:51)
遅ればせながら観ました。
主人公それぞれの視点に共感してしまいました。
怪物という言葉は相対的なものと感じました。
お勧めです。
リカオン (土曜日, 01 7月 2023 16:46)
観てきました。
安藤サクラ演じる母親目線の第一部は、自分と置き換えてしまい、辛い気持ちになりました。
第三部の子ども目線では抒情詩のような映像の中で謎が徐々にときほぐされていく感じでした。
言葉を話せないアリエルは、うまく表現できなかったり、秘密があって伝えられない子ども達や私たちの事かもしれません。
お勧めです。
グッビオのオオカミ (土曜日, 01 7月 2023 00:13)
今、改めて映画「怪物」の予告編を見直し、皆さんのコメントを読みふと思った事。
アンデルセンの童話で「人魚姫」ってありますね?最近はディズニーアニメで"アリエル"というキャラクターになり、人気があります。
人魚は体の下半分がサカナです。
ある意味、異形の化け物でしょう。
その人魚が人間の王子に恋をする。
人魚は海の魔女に相談し、人間の女性になりますが、代わりに言葉を話せなくなります。
人魚姫は王子から愛を得なければ、泡になって消えてしまう。
【人魚姫 アンデルセン童話 <福娘童話集 世界の悲しい話>】
http://hukumusume.com/douwa/betu/world/09/06.htm
アリエルのイラストの可愛らしさで誤魔化されてしまいますが、人魚姫もまた、怪物のはずで成就出来ない恋心は泡になって消えてしまう。
身体が半分サカナの異形の存在、人魚姫。
片や身分のある王子。
人魚姫の泡になる宿命。言葉が通じないハンディキャップをもちながらの命懸けの道ならぬ恋。
この物語を何故か強烈に思い出しました。
この物語の美と、この映画の美は、何が違うのだろう?
一番搾り (木曜日, 29 6月 2023)
私も観ました!!
ストーリーに引き込まれ、最後まで目が離せなかったですね!
怪物は誰だったんだろう? と思わせるストーリー展開でした。
いろんな見方ができる映画ですね!
おすすめです(^_^)
ポコ太郎 (木曜日, 29 6月 2023 21:30)
♯1 田舎者様と同様に、「怪物」始め、「ロストケア」「ケイコ目を澄ませて」も
ロードショーで観ました。ロストケアは、映画が素晴らしかったので、同タイトルの文庫本を
読了したのですが、映画⇒読書で良かった。読書してから映画を観たら、たぶんグダグダ
だったと思いました。小説の一部分しか映画化されていなかったので。
それは置いておいて、「怪物」は本当に面白かったです。観終わったあとに感じたことは、
複雑に組み合ったパズルのような作品だなと。それぞれの立場では正論なのに、他社から
見れば怪物、クレイマーという、複数の視点の妙味が味わえる映画でしたね。また、だから
観終わったあとに、自分の気づきを人に話したいと思わせる組み木細工のような複雑な作り
だったと感じました。♯2 和ナビィ様が仰る、「羅生門」と同じパターンですよね。
日本映画の新しい可能性を感じた作品でした。
ネタばれを十分理解した上で、何度でも観なおしたい映画でした。
和ナビィ (木曜日, 29 6月 2023 21:01)
気になっていた映画です。長野県諏訪市が舞台だというし。一昨日観てきました(老夫婦割引;で)。本当にご投稿にあるように「観た後に"語り合いたくなる"映画」でした。二人で観てよかったです、一人では気付かないこと、見落としていた大切なシーンがありました。そこから広がる想像、示唆されていた問題。---後で、糸を紡ぐように細くぽつりぽつりと語り合いが続きました。
この感じどこかで・・・と記憶を辿ったら黒澤明「羅生門」でした。芥川龍之介「藪の中」(映画「羅生門」の原作でもある)も。また宮沢賢治の童話も思い出されました。
湖のぐるりを囲んだ人棲む街々。昼間は何度も行って見慣れた諏訪・岡谷市、そして茅野市へ続く風景。---諏訪湖を含んだ夜景ってこう見えたんだ・・・と胸を突かれ切なくなりました。
田舎者 (木曜日, 29 6月 2023 11:06)
私も観ました。
ここ1年、いやここ数年の中では私のベストです。
ラストシーンは何とも素敵でした。
余談ですが「ロストケア」「ケイコ目を澄ませて」もとても良い映画でした。今度は「茶飲友達」をみたいと思ってます。